銭湯の娘
昨年4月、デビュー以来所属していたグループ「モーニング娘。」を離れ、ソロ活動を始めた。歌やバラエティー番組への出演など、積極的に活動の幅を広げたものの、漠然とした将来への不安があった。「1人になって、どこまでできるかと考えた時、まったく駄目な自分がいました。テレビに出てもうまくしゃべれず、重圧に負けている。だから、今回のドラマはがけっぷちからの挑戦です。強くなりたいという思いがあります」
「演技はまだまだ」と謙遜(けんそん)するが、意気込みは共演者に負けない。「(自分の)怒った顔や泣いた顔はきれいじゃないけれど、恥ずかしがらずやっていきたい」長時間の収録でも気を抜かず、感情の起伏の激しい主人公を演じている。そんな姿を見ている伊武は、「勘のいい子だから、女優として伸びると思う」と評価する。「勉強したい」という前向きな姿勢が、周囲に好感を与えている。
意外な側面もある。「思考がネガティブ(消極的)なんです。友だちは『もっと自信を持っていいよ』と言ってくれますが、ドラマの撮影当初は、演技の下手な自分が恥ずかしくなり、女優に向いていないと落ち込みました。周囲に支えられて演じているようなものです」
20日に23歳になったばかり。「歌と演技のどちらに進めば正解なのか分からないけれど、自分がどれだけ成長できるか試してみたい。欲張りだけど、両立できたらいいですね」
「モー娘。」での経験を心の糧に、つらく、苦しくても新しい分野を開拓したい小さな体から発せられる向上心のきらめきが、とてもさわやかでまぶしかった。(塩崎淳一郎)
(2006年1月30日 読売新聞)